FMIいんたびゅー記

スイスのバーゼルにあるFriedrich Miescher Institute (FMI)の大学院(PhD program)のadmissionを受けてきたので、記憶が風化しないうちに文章にしておく。
コレね→ http://www.fmi.ch/Training/PhD/

所属ラボで学部時代からしていた仕事が一段落して、ここでもう一仕事して学位を、という選択肢もなくは無かったのだが、早いうちに外に出たいなと思ったので大学院に入り直そうと思ったのが主なモチベーション。当然アメリカも考えたけれど、GPA(学部時代の成績)が圧倒的に低いせいで書類審査にパスしないだろうし(アメリカはGPAを重視していて、名の通った大学院に通る人たちは学部の成績がほぼオールA)、ラボが決まるまでのローテーション制度もいまさら感があったのでやめた。そこで、ヨーロッパに目を向け、行きたいと思ったラボが2つあるという事でFMIを受ける事にした。ヨーロッパは入試が無くて直接ラボにアプライというところが多いので、入試があるのはちょっと面倒だったけれど、FMIの待遇・研究環境が非常によさそうだったので、他には特にアプライはしなかった。

ちなみにFMIはNovartis資本の研究所で、PhD programの学位自体は提携している、地元のUniversitat Baselから発行される。

まずは書類審査なのだが、出願時点ではどのラボにオープニングがあるのかがわからないので、希望ラボ2つのPIにあらかじめ直接メールをした。(これは普通しないらしいけど、する事をオススメする。理由は後述) どう興味をもっているか、なにをやりたいかを簡単に書いて、CVと論文を添付して送った。1つのラボは現ラボでやっているネタとかなり近い研究をしていることもあって、即戦力になると思われたのかかなり好意的なメールが帰ってきて、もう片方には2回問い合わせをしたが返信無し。この手のメールは高確率に無視られるものなので(トップラボになるほどPIは忙しいから当たり前)、気にせずこの時点で出願確定。(結局この無視られた方のラボに行く事になる…)

書類をパスしたら、1週間弱のinterviewへのお誘いメールが来る。交通費・宿泊費・滞在中の食費等全部出る(後で返ってくる)ので、タダ旅行気分。そしてこの時点でどのラボが今回のプロセスでオープニングポジションがあるのかがようやくわかる。希望ラボの2つと、それプラス1つのラボに空きがあるとのことで一安心。ちなみに僕が通ってるので、成績はあまり重視されない模様。(僕よりGPAが低い人はそうそういないだろう…)  書類審査の倍率は結構高くて、350以上の応募書類からinterviewに呼ばれたのは14人。日本人1人、カナダ人1人であとはヨーロッパから。地元のスイスは意外に1人だけ。

初日、まずはトーク。committeeの前で10分間プレゼンして、その後15分間質疑応答。committee、といいつつ他のグループリーダー達も後ろで聴いてるので、そうそうたるメンツを前にトークをすることになる。。。その後、それぞれの分野(Neurobiology/Epigenetics&Cancer)の空きがあるラボのPIと30-60分づつ個別面談。希望ラボの2つには希望している旨を伝え、次の日以降にもっとじっくり議論するという予定を組むのと、ラボのセットアップを観たり、ラボメンバー(都合が付く限りほぼ全員)との面談だったりをお願いする。余計な時間を使わせても悪いので、希望しないラボのPIには正直にそう伝えた。(普通は興味あるフリをしておいて、offerをもらう確率を上げるものらしいけど…)  へとへとになって初日終了。そして実はオフィシャルに時間が決まってる予定はこれで全部。

2-4日目、ボスとより長時間の議論をするのと、ラボの見学、時間のあるメンバーとひたすらディスカッション。なお、シャペロンというお世話係の学生が一人付いてくれて一応案内してくれることになっているけど、そのシャペロンの所属ラボ以外は自分でなんとかするしかないし、そもそも結構テキトーである。当然英語能力にはかなり難があるので、PIとの議論に備えてラボ毎に「このラボでこういう事がやりたい」というプロジェクトのパワポスライドを作っていって、それを元に議論。ラボメンバーとの議論のときも、自分のこれまでの仕事とやりたいプロジェクトの説明のためにラップトップを常に持ち歩くようにした。正式なオファーは全行程終了後にメールでくるのだが、この時点で希望ラボ2つのPIから「オファーを出す」と言ってもらえた。ちなみに夜は他のcandidate達と飲みに行ったり、グループリーダーを含めた立食パーティーがあったりする。人によっては若干ピリピリしてるので、既にオファーをもらってることは同分野のcandidateには伏せてた。楽しくやりたいし。
なお、ボスによっては2日目以降、興味があるというメールをあらかじめ入れていたcandidate以外は無視することもあるらしく、僕に興味を持ってくれていた方のPIのラボは、ラボメンバーも含め、僕以外のcandidateを相手にしなかったらしい…ので、無視られてもいいからあらかじめメールを入れておくというのは大正解でした。ちなみにそのメールの時点でPIが興味を持てば、一存で書類審査をパスさせることもできるようなので、それで通った可能性は0ではないかも。

5日目、他のcandidate達とBasel観光。小さい街なので一瞬で終了。

その後、正式にオファーのメールが来て、そのうちの1つのラボのオファーを受ける旨を連絡。
おそらく仕事を出すだけなら今のバックグラウンドに近いRoskaのラボに行った方が論文はスムーズに出るだろうと思ったけれど、興味のある方向に少しでも近づきたかったのとバイオロジーの幅を広げたかったのとで、Luthiの所に行く事に決めた。

という感じ。「プロジェクト考えてきたのにimpressedした。そこまでしてくる人はほとんどいないから」とLuthiに言われたので、それが勝因だったのだと思う。普通にみんなするだろうと思っていたのでちょっとびっくりだが、後でヨーロッパでラボを持っているPIの方に話を聞いたところ「ヨーロッパのマスターは1年だけのところもあるし、学部生に毛が生えた程度の人が多い」とのことだったので、そんなものなのかもしれない。

interviewを通して、トップラボのPIを含む優秀な研究者とじっくり議論できる機会が持てるし、PI陣の前でトークが出来る機会なんてそうそうないので、そういった意味でも非常にいい経験になった。そのためだけにわざわざ受ける価値があるなと思う程。ホテルの部屋が他のcandidateと2人で相部屋なのもあって生活もずーっと英語だし、夜は飲みに行くし(飲みながら複数人で雑談、というのが一番キツい)、で英語面でもいいトレーニング。

大学院生の給料は非常にいいし(物価高いとは言え学振の2倍)、学部の成績のせいでアメリカを諦めている人にも、スイスおすすめです。ちなみにドイツ語圏ですが、研究所内は当然すべて英語だし、ドイツ語全く出来なくても問題なく生活できるとのこと。(というかそうでないと困る!)

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